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東山動植物園の

インドサイ飼育史



久しぶりに、遠藤秀紀著「東大夢教授」(リトルモア2011)の最初のエピソード、”桜の夜”を読み返した。


「夢教授」が死亡したばかりのサブというインドサイの解剖のために、架空の動物園に呼ばれたという設定で書かれているが、著者の遠藤教授が2008年に死亡した東山動植物園のインドサイのサンバの解剖に呼ばれ、そのときのことを下敷きにして書かれているように想像できる。


翌朝の開園時間がタイムリミットの緊張感溢れるサイの解剖について知ることのできる貴重な読み物だ。


再読しながら、サンバを含めた東動植物園のインドサイの飼育史について調べたくなった。


世界の飼育下インドサイの血統登録を担当しているスイスのバーゼル動物園が作成しているインドサイの血統登録台帳 Stud book (「下記リンク)を参照して飼育史の一覧表を作ってみた。


http://www.rhinoresourcecenter.com/pdf_files/153/1531678916.pdf



【史】1974年からの東山動植物園のインドサイ飼育史_e0266067_15295788.png



1974年から現在までの動きは以下の通り。


導入 :海外から4頭

    国内から1頭


誕生 :2頭

死亡 :3頭

移動  1頭(→オーストラリア)




調べてみて、驚いたのはドラが1999年に誕生し、2001年にJaya が死亡する以前の2000年当時には、インドサイが何と5頭も同時に飼育されていたこと!


ドラ誕生以前も1991年にニルギリとNandi の来園以来、4頭が飼育されていて、現在の東山でも3つのインドサイの放飼場が並んでいるのは、東山の飼育史を考えると納得がいく。


また、多摩動物園にいるターと、東山で飼育されていたNandi は同じスイスのバーゼル動物園生まれで、さらに両親が共通の兄弟だということが分かった。


サンバについては今でもネット上に死亡記事が残っているが、Jaya と Nandi については検索しても何も見つからないのが残念だ。


現在、東山で飼育されているのは、ニルギリとセラ親子、そして金沢動物園生まれのブンタの3頭。






曇り空、ときおり雨の

上野動物園のクロサイたち



アルゴ ♀

1995.10.30 横浜・金沢動物園生まれ


上野動物園のクロサイ 2022 6.15_e0266067_17533970.jpg

快適な気候でゆっくりお昼寝。



気持ちよさそうな寝顔。



目を覚まして、機嫌がよさそうなアルゴ。









柵越しに、マロと対面。




マロはアルゴが奥で昼寝をしている間、何度もここから覗いていた。




マロ ♂

2002.2.17 茨城かみね動物園生まれ



時々雨が降って、角削り日和。







美しい顔だね、マロ!



ついに日本の動物園でサイ角盗難事件発生!

静岡の日本平動物園で

展示中のシロサイの角が

夜間に盗まれた!




以前から心配していたことが遂に起こってしまった!


サイ角はベトナムや中国で驚くほど高い金額で密売されているが、全般的に日本の動物園では、標本として所有するサイ角の扱いに警戒心が不足しているように思っていた。


いくつかの動物園でそのような印象を受けることがあった。



今回はその油断に付け込まれてしまったようだ。


園路を通る入園者によく見えるように、ショーウインドウのようなガラス張りの展示場所でガラスケースのなかに置かれたサイの頭部骨格標本から角の部分だけを、犯人は持ち去った。



未解決の日本平動物園サイ角盗難事件_e0266067_22260384.jpg
(C)日本平動物園




角は同園で1989年から1999年まで飼育され死亡したサイタロウのものだ。


未解決の日本平動物園サイ角盗難事件_e0266067_17283878.jpg
(C)日本平動物園

5月30日(月)に夜9時に警備員が見回ったときには異変はなかったが、翌朝7時に職員がガラスが壊されサイ角がなくなっていることを発見した、という。


事件から半月以上を経ても犯人逮捕の報道はない。角の展示場所に防犯カメラがなかったというが、何か捜査の手がかりはあるのだろうか?


事件が起きたのは休園日の夜間なので、開園中に入った犯人が園内のどこかに隠れていた可能性は小さい。





2017年にはフランス、パリ郊外のトワリー動物園のまだ4才のオスのシロサイが、夜間に侵入した密猟者に撃ち殺され角を持ち去られるという事件が起きた。


同一ブログ内関連記事:

フランスの動物園のシロサイが密猟されて死亡

https://sainomimy.exblog.jp/25614591/

(2017.3.17)





動物園という施設は、動物の脱走対策には力を入れるが、悪意のある人間の侵入はあまり想定していないため、彼らは容易に忍び込めたのではないだろうか?



今回のような、動物園で展示中のサイの角の盗難事件は、2011年にイギリスの動物園で発生している。このときは、開園時間に展示棚のロックが外され持ち去られたという。


その後、動物園で同様の事件の情報は見当たらないので、今回の日本の事件はそれ以来11年ぶりのことかもしれない。



サイ角やその工芸品が欧米の博物館や美術館から盗まれる事件は、2009年頃から多発していた。まさしくサイの角の密売価格が高騰し密猟が急増し始めた時期と重なっている。


その後はサイ角を展示する場合には実物ではなくレプリカに切り替える対策が講じられたので、こうした事件は欧米では減少した。



日本の警察も今回のケースを単なる動物の標本の一部の盗難事件ということではなく、密売価格で言えば数千万円の貴重品の盗難事件として全力を上げて捜査してくれていることを願うが、発生後半月あまり経って未解決のこの事件、私は解決困難だという気がしている。


再発防止のためにも早く犯人を見つけて、サイタロウの角を取り戻して欲しいけれど。



2017年のフランスの動物園で夜間に飼育中のサイが密猟者に撃たれ奪われた角は、美術品盗難の捜査経験が豊富なフランスの警察が捜査をしたが未解決で、角は事件発生後すぐに国外に持ち出されたのではと推察されていた。



サイ角は密売価格が高く儲けが大きいので、密売ビジネスとして麻薬や人身売買などに関わる国際的なシンジケートが関わっていることが多い。


彼らはサイの密売のための豊富な資金、情報、ノウハウを持っているので、今回も日本で入念な準備をして迅速に窃盗を成功させ、サイ角を巧妙に偽装して税関をくぐり抜け、サイ角需要の高いベトナムあるいは中国に持ち出し、すでにサイ角消費者の富裕層のもとに渡っているのかもしれない。


あくまでも私の想像だが、もしそうだとしたら、日本の動物園のサイの角まで、密売人の悪どい商売の道具にされ、最終的には、ベトナムや中国の富裕層のステータスシンボル、つまりは虚飾の道具として今回はサイタロウの角が削られ水やアルコールに溶かして飲まれることがとても腹立たしい!



日本平の事件に衝撃を受け今後はサイ角を所有するすべての日本の動物園が厳重な管理をすることを期待できるかと思うが、ともかく今回の成功に味をしめた犯罪者集団がまた日本の動物園のサイ角を狙っても阻止できるだけの警備体制を整えて欲しい。


園内の監視カメラも増やして欲しいし、万が一に備えて、GPS機能のあるチップをサイ角の標本に埋め込んでもよいかもしれない。


南アフリカの保護区などでは、サイに鎮静剤を打って角にチップを埋めこみ、居場所の確認や、密猟された場合にサイの角の場所を調べるのに利用している。



さらに、フランスの動物園のように飼育しているサイが密猟されることがないように、サイ舎への夜間の外部からの侵入を強固に防ぐ対策も改めて考えてもらえたらと思う。




今回の事件の報道記事で下記リンクの記事の次のような記述には違和感をもった。


https://look.satv.co.jp/_ct/17546227


「体感型動物園iZOOの白輪剛史園長によりますと、かつて合法だったころは1グラム1万円ほど価格がついたといいます。盗まれたツノは5キロあったため、単純に計算すると5000万円の価値となります。」



しかしながら、ワシントン条約でサイの角の国際取引が禁じられたのは今から45年前の1977年で、それ以前にサイ角がそのような超高値で販売されていた、というのは考えにくい。


ベトナムや中国では「サイの角は万能薬」という迷信が広く信じられているが、サイ角が超高値で密売されるようになった理由は、約15年前から中国やベトナムの経済が急成長が新しい富裕層を生み出し、サイ角需要が急速に高まったことである、と専門家やサイ保護団体は分析している。





参照記事 :


1.

サイの角、盗難 日本平動物園で展示の標本

https://www.chunichi.co.jp/article/481695



2.

1本5000万円!? 「漢方薬」に利用!?…

https://look.satv.co.jp/_ct/17546227



3.

Rhino horn stolen from exhibition space at Shizuoka zoo

https://www.asahi.com/ajw/articles/14636763



4.

Poachers just killed a beloved white rhino — inside a French zoo

https://getpocket.com/library/?pl_i=1641741629



5.

Drusillas zoo black rhino horn stolen

https://www.bbc.com/news/uk-england-sussex-14756061





参照記事3.より原文一部引用:


A zoo official who reported to work at around 7 a.m. on May 31 discovered that the horn was missing and saw the glass enclosure once housing it had been shattered at the zoo’s exhibition space, according to the city.

The horn, belonging to a white rhino from Africa, weighs 5 kilograms and measures 40 to 50 centimeters in length, said city officials.









米のサファリパークで

シロサイの足に計測機器を

装着



フロリダのディズニーワールドのアニマルキングダムのキリマンジャロ・サファリのシロサイのメスのヘレン(30)の右前足に、電子機器が入った小さなポーチが装着された。


万歩計?を付けた米国のシロサイ!_e0266067_15083513.jpg
(C)AF Photo



電子機器は加速度計とGPS装置で、ヘレンの1日の歩数、歩行速度、睡眠時間、および人工的なサバンナにおいて好む場所のデータを収集するのが目的。


ヘレンに問題がなかったら、9頭のうち6頭程度の他のサイにも装着する予定。夜間には装置が外される。



データは、飼育下でのサイの最良の環境やケアを研究するため、20以上の施設と共有される。


アメリカの動物園やサファリパークは日本に比べて格段に広いスペースのところが多く飼育環境はよいと思われるが、それでもこのように改善のための研究が行われるのは、目指す飼育環境のレベルの高さを思わされる。


日本でサイを飼育している施設にも、こうしたデータが共有されて少しでも飼育環境の改善に活かされることを願う。




参照記事:

1.

Step-by-step: Disney rhino gets fitted with fitness tracker

https://www.washingtonpost.com/national/step-by-step-disney-rhino-gets-fitted-with-fitness-tracker/2022/05/16/78f596d6-d55b-11ec-be17-286164974c54_story.html


2.Step-by-step: Disney rhino gets fitted with fitness tracker


https://www.titusvilleherald.com/news/article_c8dec008-f641-55de-b271-d7d77a48dd4d.ht



参照記事1.より原文一部引用:

The purpose is to gather data on the number of steps she takes each day, whether she is walking, running or napping, and which part of the man-made savanna she favors the most. The device, about a foot (0.3 meters) in diameter, has an accelerometer and a GPS tracker and it’s fitted around her ankle.