以前から心配していたことが遂に起こってしまった!
サイ角はベトナムや中国で驚くほど高い金額で密売されているが、全般的に日本の動物園では、標本として所有するサイ角の扱いに警戒心が不足しているように思っていた。
いくつかの動物園でそのような印象を受けることがあった。
今回はその油断に付け込まれてしまったようだ。
園路を通る入園者によく見えるように、ショーウインドウのようなガラス張りの展示場所でガラスケースのなかに置かれたサイの頭部骨格標本から角の部分だけを、犯人は持ち去った。
(C)日本平動物園角は同園で1989年から1999年まで飼育され死亡したサイタロウのものだ。
(C)日本平動物園
5月30日(月)に夜9時に警備員が見回ったときには異変はなかったが、翌朝7時に職員がガラスが壊されサイ角がなくなっていることを発見した、という。
事件から半月以上を経ても犯人逮捕の報道はない。角の展示場所に防犯カメラがなかったというが、何か捜査の手がかりはあるのだろうか?
事件が起きたのは休園日の夜間なので、開園中に入った犯人が園内のどこかに隠れていた可能性は小さい。
2017年にはフランス、パリ郊外のトワリー動物園のまだ4才のオスのシロサイが、夜間に侵入した密猟者に撃ち殺され角を持ち去られるという事件が起きた。
同一ブログ内関連記事:
フランスの動物園のシロサイが密猟されて死亡
https://sainomimy.exblog.jp/25614591/
(2017.3.17)
動物園という施設は、動物の脱走対策には力を入れるが、悪意のある人間の侵入はあまり想定していないため、彼らは容易に忍び込めたのではないだろうか?
今回のような、動物園で展示中のサイの角の盗難事件は、2011年にイギリスの動物園で発生している。このときは、開園時間に展示棚のロックが外され持ち去られたという。
その後、動物園で同様の事件の情報は見当たらないので、今回の日本の事件はそれ以来11年ぶりのことかもしれない。
サイ角やその工芸品が欧米の博物館や美術館から盗まれる事件は、2009年頃から多発していた。まさしくサイの角の密売価格が高騰し密猟が急増し始めた時期と重なっている。
その後はサイ角を展示する場合には実物ではなくレプリカに切り替える対策が講じられたので、こうした事件は欧米では減少した。
日本の警察も今回のケースを単なる動物の標本の一部の盗難事件ということではなく、密売価格で言えば数千万円の貴重品の盗難事件として全力を上げて捜査してくれていることを願うが、発生後半月あまり経って未解決のこの事件、私は解決困難だという気がしている。
再発防止のためにも早く犯人を見つけて、サイタロウの角を取り戻して欲しいけれど。
2017年のフランスの動物園で夜間に飼育中のサイが密猟者に撃たれ奪われた角は、美術品盗難の捜査経験が豊富なフランスの警察が捜査をしたが未解決で、角は事件発生後すぐに国外に持ち出されたのではと推察されていた。
サイ角は密売価格が高く儲けが大きいので、密売ビジネスとして麻薬や人身売買などに関わる国際的なシンジケートが関わっていることが多い。
彼らはサイの密売のための豊富な資金、情報、ノウハウを持っているので、今回も日本で入念な準備をして迅速に窃盗を成功させ、サイ角を巧妙に偽装して税関をくぐり抜け、サイ角需要の高いベトナムあるいは中国に持ち出し、すでにサイ角消費者の富裕層のもとに渡っているのかもしれない。
あくまでも私の想像だが、もしそうだとしたら、日本の動物園のサイの角まで、密売人の悪どい商売の道具にされ、最終的には、ベトナムや中国の富裕層のステータスシンボル、つまりは虚飾の道具として今回はサイタロウの角が削られ水やアルコールに溶かして飲まれることがとても腹立たしい!
日本平の事件に衝撃を受け今後はサイ角を所有するすべての日本の動物園が厳重な管理をすることを期待できるかと思うが、ともかく今回の成功に味をしめた犯罪者集団がまた日本の動物園のサイ角を狙っても阻止できるだけの警備体制を整えて欲しい。
園内の監視カメラも増やして欲しいし、万が一に備えて、GPS機能のあるチップをサイ角の標本に埋め込んでもよいかもしれない。
南アフリカの保護区などでは、サイに鎮静剤を打って角にチップを埋めこみ、居場所の確認や、密猟された場合にサイの角の場所を調べるのに利用している。
さらに、フランスの動物園のように飼育しているサイが密猟されることがないように、サイ舎への夜間の外部からの侵入を強固に防ぐ対策も改めて考えてもらえたらと思う。
今回の事件の報道記事で下記リンクの記事の次のような記述には違和感をもった。
https://look.satv.co.jp/_ct/17546227
「体感型動物園iZOOの白輪剛史園長によりますと、かつて合法だったころは1グラム1万円ほど価格がついたといいます。盗まれたツノは5キロあったため、単純に計算すると5000万円の価値となります。」
しかしながら、ワシントン条約でサイの角の国際取引が禁じられたのは今から45年前の1977年で、それ以前にサイ角がそのような超高値で販売されていた、というのは考えにくい。
ベトナムや中国では「サイの角は万能薬」という迷信が広く信じられているが、サイ角が超高値で密売されるようになった理由は、約15年前から中国やベトナムの経済が急成長が新しい富裕層を生み出し、サイ角需要が急速に高まったことである、と専門家やサイ保護団体は分析している。
参照記事 :
1.
サイの角、盗難 日本平動物園で展示の標本
https://www.chunichi.co.jp/article/481695
2.
1本5000万円!? 「漢方薬」に利用!?…
https://look.satv.co.jp/_ct/17546227
3.
Rhino horn stolen from exhibition space at Shizuoka zoo
https://www.asahi.com/ajw/articles/14636763
4.
Poachers just killed a beloved white rhino — inside a French zoo
https://getpocket.com/library/?pl_i=1641741629
5.
Drusillas zoo black rhino horn stolen
https://www.bbc.com/news/uk-england-sussex-14756061
参照記事3.より原文一部引用:
A zoo official who reported to work at around 7 a.m. on May 31 discovered that the horn was missing and saw the glass enclosure once housing it had been shattered at the zoo’s exhibition space, according to the city.
The horn, belonging to a white rhino from Africa, weighs 5 kilograms and measures 40 to 50 centimeters in length, said city officials.